日本人は、口腔衛生(歯の白さ、歯並び、口臭)ではかなりな後進国と見なされている

人生100年時代
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日本人の口腔(歯および口臭)に関する衛生意識、美容意識は、諸外国に比べてかなり遅れていると感じられる。調査してわかった一番の印象は、欧米では、歯科医師は好かれている人、パートナーであるのに対して、日本ではその意識はほとんどない点である。また、予防に関する知識が判明したのは、最近ここ50年~60年前からであり、日本も今からでも遅くないと思われる。

1815年アメリカの歯科医:パームリーパームリーは次のように言っています。

女性の美しさは、“歯の美しさ”なしには考えられない。口からこの歯という美しい装飾品が奪われると、容貌という最大の魅力が失われてしまう。

諸外国と比較しつつ日本の口腔の現状と対策について述べる

第36回  日本人の歯-3  美容意識

1)オーラルケア意識調査結果(日本・欧米(アメリカ・スウェーデン))

いろいろな研究機関が世界各国のオーラルケアの調査を行っており、例えばLION(株)やサンスター(株)の調査を参考にすると

①オーラルケアの自信   

欧米は 約8割の人が「自信あり」と回答⇔日本は6割以上が「自信なし」

②デンタルフロスの使用 歯磨き方法

欧米:デンタルフロスの使用率が50%を超え、複数のアイテムを使い念入りにケアしたい人が約7割⇔日本では半数以上(51.3%)がブラッシングだけで充分の手軽に済ませたい傾向

③オーラルケアアイテムのこだわりと年間平均購入金額

*オーラルケア用品へのこだわりについては、アメリカでは 77.2%、スウェーデンでは 64.9%がこだわって選ぶ⇔日本は約半数(49.9%)があまり考えずに選ぶ

*スウェーデン8,415円、アメリカ8,354円⇔日本4,965円とお金をかける意識では欧米2カ国に比べ日本は低い傾向。

④予防歯科と歯科医師とかかわり方

*「必要性」は、欧米と日本で 70.7%の人が感じているが「実践」は、欧米の約7割⇔日本では 26.2%。

*「予防歯科」が浸透している欧米では、歯科医院で定期的に歯科健診を受けることが習慣になり、日頃から専門家と一 緒に口腔内の健康づくりを実践している。

*欧米では、歯科医師は好かれている人、パートナーであるのに対して、日本ではその意識はほとんどない。この点が大きく異なる。

⑤定期健診受診回数

直近の定期健診受診回数は、アメリカは年間2回が最多で34.9%、スウェーデンでは1回が最多で 57.1%⇔日本は受けていないが 57.5%と最多に。

2)予防に革命を起こした人たち

世界の研究機関が論文を発表しているが、Oral Care(株)の論評(世界の予防の始まりとオーラルケアの歩み)を参考にすると

<アメリカ>

①レヴィ・スピア・パームリー:1815年、フロスの価値を世界で初めて訴えた。

歯と歯の間を清掃することは、世界中のどんな歯ブラシや歯磨き粉より疾患の予防につながると、絹糸で歯間部を清掃することを勧めた。

しかし、この意見は100年以上無視され、治療全盛の時代になっていった。

②バークレー:患者との関係性を大切にし、予防歯科の騎士と呼ばれる。

「歯を診る」だけでなく生活習慣を大事にする「人を診る予防」へ大きく舵を切り、現在のアメリカにおける予防歯科の礎となっている。

<北欧・デンマーク>

  • ハロルド・ルー:1965年歯肉炎の原因はプラーク(細菌)であることを発見

学生と歯磨きをしない詳細な実験を行い次のことを発見した。

*歯磨きをしないと2日間でバイオフィルム(細菌の集合体)が形成される。

*3日目と4日目は一気にバイオフィルムの厚みが大きくなる。

*20日後には全員が歯肉炎を発症。

*ところが、歯磨きをしてプラーク(細菌)を除去したところ、2~3日で歯肉炎が消えた。歯肉炎の段階であれば、プラークを除去することで健康な状態に戻せる。

<北欧・スウェーデン>

1960年代スウェーデンは、多くの国民がむし歯や歯周病にかかっていた。このまま放置すると国の医療費が莫大に跳ね上がることが予想されたため、1970年からむし歯と歯周病の予防が国家戦略とされた。

  • ヤン・リンデ:歯周病学の世界的権威

歯周病の治療では、プラークをコントロールすることがもっとも大切であると説いている。

②ペール・アクセルソン:1970年代、現在のスウェーデンで行なわれている予防の「基盤」を作り世界中に多大な影響を及ぼし、その功績から“予防の父”と呼ばれている。次のような発見をした。

*むし歯や歯周病菌ができやすい「リスク部位」があること

*リスク部位を理解することで、何歳から始めても歯は守ることができることを発見

3)日本人の美意識

(1)歯並び

歯並びに関してはあまり気にしていない人も多く、多少悪かったり八重歯があったりし、完璧な歯並びの人は少ないと思われる。

しかし、海外へ行くと歯並びの綺麗さに驚いた経験をした人は多いと思います、

世界を基準にしてみると日本人の歯並びは驚くほど悪いのです。

  • スウェーデンの取り組み

一般的な虫歯の治療および「歯列矯正」も19歳までは無料で受けることができる。

*18歳以下の子どもに虫歯があった場合、放置し続けた親は児童虐待の罪で公的機関に通報されるといった厳しい処罰が課されるケースもある。「子どもの歯科治療は、親の務めであり国の務め」なのです。

(2)歯の白さ 

*アメリカおよび諸外国では「歯がその人の印象を決める」とも言われるほど重要なパーツだと考えられており、黄色い歯を放置していると「だらしない」「不潔」「不健康」「ボロボロの服を着て歩いているのと同じくらい恥ずかしいこと」といったネガティブなイメージをもたれてしまい、歯が綺麗なのはもはや当たり前となっている。

*日本では、保険に加入により治療費は安いのですが、外国ではそういう制度がない国も多く、自己負担が大きいため、なるべく虫歯や歯周病にならないよう、毎日丁寧に歯磨きをし自己管理を行なっているそうである。外国人の歯が綺麗なのには、こういった理由がある。

(3)銀歯

*歯科先進国で銀歯を用いて治療する国は日本以外にはほぼない。歯の美意識が低いと思われている。

*海外では虫歯の詰めものや被せものに一部を除いて金属を使うことはなく基本的にレジン(歯の色に近いプラスティック素材)などを用いて治療をすすめる。

*ドイツやスウェーデンでは銀歯に使われる金銀パラジウム合金という成分が金属アレルギーなど体への悪影響をおよぼす可能性があるとして歯科での使用を禁止している。

(4)口臭

①外国人の日本人に対する印象

*多くの外国人は「日本人は口が臭い」と感じており、在日外国人の72%が「日本人の口臭にがっかりした経験がある」と解答している衝撃的な事実がある。

*日本人同士でも72%のビジネスパーソンが、「他人の口臭が気になったことがある」と回答している。

②日本人の原因

*日本の成人のうち、ほぼ8割の人がかかっている歯周病が原因であると指摘されています。

③外国人の対策

外国では体臭よりも口臭への意識が高く、大人から子供まで口の臭いに関しては特に意識してケアをしている人が多い。

*子供の教育:親が子供に幼いうちから知識、マナーやエチケットを教える。

*口臭ケアのグッズ:薬局やドラッグストアにはたくさん販売されており、情報が国民に流通している。

*歯磨き:朝昼晩に加えて、何か物を口にしたら歯磨きする、人と会う前は歯磨きをするなど、合間に歯磨きをしていることが多い。

*歯ブラシを持ち歩くのは当たり前で、マウスウォッシュや歯間ブラシなども持ち歩いている人が多い。

*歯磨き時間は、一回あたり10分以上の人も多い。

*歯間ブラシ:デンタルフロス、歯間ブラシで磨く。

*舌磨き:舌苔が原因となっている場合も多く、舌用ブラシも活用している。

*マウスウォッシュ:歯磨きや歯間ブラシを行った後に、マウスウォッシュを使って口臭ケアを行っている人が多い。

*スケーラー:歯石を取る道具で、外国では日頃から歯石が付いていたらスケーラーを使い、徹底的に除去している。

最後に、これまで歯科治療で痛い経験をした人が多いからだと思われるが、治療だけではなく、治療後のケアや、トラブルが起きる前の予防に関わる事で、歯科医に対する苦手意識を変えて、パートナーとして頼り、定期的に訪れるような関係を築いていけるかが今後の日本の口腔上の問題の発展につながると思われる。

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