時代小説を読んでいて、視覚障害者の組織があり、かなりな権力を持っていたようなので興味がわいたので実態を調べてみました
座頭市は権力をもっていたのでしょうか。映画で出てくるような格好いい人はいたのでしょうか
なお、座頭市に関する書物は多数出版されており、これらを参考にさせていただきました。
座頭市―時代小説英雄列伝 (中公文庫) 2002 子母沢 寬, 童門冬二, 犬塚 稔
座頭市―勝新太郎全体論 単行本 1998 平岡正明
座頭市 [電子書籍版] 平田弘史
第33回 江戸時代の視覚障害者の組織
1)座頭市は本当にいたのか
結論から言うと、モデルになった人はいたが、人を切りまくる剣客というのは、映画が作り出した脚色のようです。
① 会津若松市の浄光寺というお寺に座頭市の墓が実際にあります。
②越後長岡藩主牧野家の武士で、本名は、阿部常衛門。青年時代に眼病を患い失明。
③年老いてから下総飯岡*に出向いたようで、嘉永2年(1849年)11月没と、没年まで判明している。
*「天保(1830年~1844年、徳川家斉、家宣)の頃、下総飯岡の石渡助五郎のところに座頭市という盲目の子分がいた」という書き出しで始まる『座頭市物語』ですが、実は作者の子母沢寛は、飯岡で座頭市のモデルとなる人物の話を耳にして、短編を創りあげた。
2)視覚障害者の組織があった
①室町時代
*検校(けんぎょう):檢校あるいは建業とも書いた
室町時代以降、盲官(盲人の役職)の最高位
もともとは、平安時代・鎌倉時代に置かれた荘官、社寺や荘園の監督役職名である。
*当道座が開かれる:明石覚一が『平家物語』をまとめ、室町幕府からの庇護を受け当道座を開き、検校は当道座のトップを務めた。
②江戸時代での組織化
*総検校:京都に国の座をまとめる最高位として置いた。
*総録検校:江戸に関東の座の取り締まる。
<検校組織>
*検校の下に当道座:別当、勾当(こうとう)、座頭などがあった。
*検校の身なり
専用の頭巾・衣類・杖などの所有が許された。
剃髪し、正式な検校専用服(検校服)は僧服に近く、また実際に僧職となる者もいた
*幕府は盲人が当道座に属することを奨励し整備された。寺社奉行の管轄下ではあるがかなり自治的な運営が行なわれた
イ) 検校の権限の拡大
検校の権限は大きなものとなり、社会的にもかなり地位が高く、当道の統率者である惣録検校になると十五万石程度の大名と同等の権威と格式を持っていた。
ロ)検校への階段:
当道座に入座して検校に至るまでには73の位階があり、検校には十老から一老まで10の位階があった。
ハ)当道の会計:
書記以外はすべて視覚障害者によって行なわれたが、彼らの記憶と計算は確実で、1文の誤りもなかったという。
二)盲官位の売買:
*視覚障害は世襲とはほとんど関係ないため、平曲、三絃や針灸の業績が認められれば一定の期間をおいて検校まで73段に及ぶ盲官位が順次与えられた。
*そのためには非常に長い年月を必要とするので、早期に取得するため金銀による盲官位の売買も公認されたために、当道座によって各盲官位が認定されるようになった。
ホ)検校の専門職:音楽家(他 鍼灸医、学者)
*地歌三弦、箏曲、胡弓楽、平曲の専門家として、三都を中心に優れた音楽家となる検校が多く、近世邦楽発展の大きな原動力となった。属の音楽家として大名に数人扶持で召し抱えられる検校もいた。<有名な音楽家> 磐城城平藩の八幡検校、尾張藩の吉沢検校
*また鍼灸医として活躍、学者として名を馳せた検校もいる。
へ)座頭金(または官金)の横暴
*官位の早期取得に必要な金銀収入を容易にするため、元禄頃から幕府により高利の金貸し(座頭金)が認められていた。
*禄の薄い御家人や小身の旗本らに金を貸し付けて暴利を得ていた。
*多額の蓄財をなした検校も相当いた(名古屋検校が十万数千両、鳥山検校が一万五千両など)
*吉原での豪遊等で世間を脅かせた。八検校と二勾当があまりの悪辣さのため、全財産没収の上、江戸払いの処分を受けた(元禄7年)。
③明治維新後
*1871年盲人の官職は廃止され、検校を頂点とした盲人間での階層支配機構も廃絶され、盲人に対する制度的優遇措置は改められることになった。
3)座頭市の海外での評判
詳細は割愛するが、アメリカや香港の映画界に多大な影響を与えたといわれている。
<キューバ>
キューバが日本を好きなのは、勝新太郎と「座頭市」のおかげといわれているようである。
*1958年のキューバ革命以後、キューバではハリウッド映画の輸入が禁じられたため、日本映画が頻繁に公開された。
*1967年に初上映された勝新太郎の「座頭市」シリーズはもっとも公開回数が多く、ハンデキャップを抱えた孤高の剣士に、キューバ国民は自らの置かれた境遇を重ね合わせ、熱狂的に支持された。
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