気品のある暮らしを尊敬の念でみたモース(明治初期)

人生100年時代

日本人の素晴らしさの続編として明治初期のモースの日本人評について紹介いたします

第28回 日本人のすばらしさー10 (明治初期 モース)

何もない家に住んでいることに驚いたエドワード・シルヴェスター・モース

モースは、1838年に米国メイン州ポートランドで生まれた。標本採集に1877年(明治10年)から3度にわたって来日し北海道から鹿児島まで訪れた。初代動物学教授として東京帝国大学を2年務め、大学の社会的・国際的姿勢の確立に尽力した。大森貝塚を発掘で有名である。日本の人類学・考古学の基礎をつくった。初めてダーウィンの進化論を体系的に紹介した。モースは日本を深く愛し、多くの品々を米国に持ち帰りました。里帰りしたコレクションから、130年前の日本の姿が見えてきます。

エドワード・シルベスター・モース肖像画
1914年
ピーボディー・エセックス博物館蔵

参照

明治のこころ-モースが見た庶民のくらし ペーパーバック 日本語版  エドワードモース(著)

日本その日その日 (講談社学術文庫)エドワード.シェルベスター・モース(著), 石川欣一 (翻訳)

<日本人評>

①自然

この地球の表面に棲息する文明人で、日本人ほど、自然のあらゆる形況を愛する国民はいない。凪、霧、雨、雪、花、季節による色彩のうつり変り、穏かな河、とどろく滝、飛ぶ鳥、跳ねる魚、そそり立つ峯、深い渓谷――自然のすべての形相は、単に嘆美されるのみでなく、数知れぬ写生図やカケモノに描かれるのである。
②子供

日本ほど子供が親切に取り扱われ、そして子供の為に深い注意が払われる国はない
③働き

私は今までにこんなに人が働くのを見たことがない

④プライバシー

*プライバシーは野蛮で不作法な人々の間でのみ必要なことを忘れている。日本人は、こういった野蛮な人々の非常に少ない国民であり、これに対し、いわゆる文明化された民族、とりわけイギリス人やアメリカ人の社会の大半は、このような野蛮な人々の集まりなのである。

*朝起きたら雨戸をあけ、障子や襖は日中は開けっ放しにするのが常でした。

*その意味では現代にいうプライバシーというのはありませんでしたが、その代わり「他人の部屋をのぞいてはいけない」という不文律もあったのです。例えば、女性が部屋で着かえるときにはそっと襖を閉めるだけでよく、もし男性の不心得者が、女性が着かえるところを覗き見ようとして襖でも明けようものなら、同僚の男性に殴られるということで社会の規律が守られていたのです。女が着替えるところを見ようなんて男の風上にも置けぬっというわけです。

⑤住宅

*日本の住宅の内部は、非常に簡潔な構成だ。これは私たちアメリカ人が慣れ親しんできたインテリアとは根本的に違い説明しようにも、 適切な言葉がうかんでこない

*わが国の住居とくらべて、 こんなに何もない。何もないと思っていた室内を深く観察していくうちに、 壁の塗り仕上げと木とが、 完全に調和していることや控え目な墨で描かれた襖絵などを発見し、これらの趣向が日本人の深い教養を語りかけていることに感動する。実際は、より快適な生活を送るために、こうしているのだ。

*目をゆっくりとやすめるべく、目につくところには何も置かない徹底したすがすがしさや洗練さが、 日本の室内装飾の大きな特徴であり、 日本人は「努力して」この単純さとすばらしさを実現しているのだ、 部屋を家具やもので埋めつくすことばかりが室内装飾であると思い込んでいるアメリカ人の趣味に対して疑問を投げかけている。この日本的な室内装飾の美意識こそ、 伝統的な室礼の精神そのものである。

*慶応2年(1866年)に日本にやってきたデンマーク人のエドウアンドスエルソン(1842-1921)も同様なことを言っている。

⑥道徳観、盗み

鍵を掛けぬ部屋の机の上に、私は小銭を置いたままにするのだが、日本人の子供や召使は一日に数十回出入りをしても、触っていけないものは決して手を触れぬ。

⑦男女の関係

極めて厳密にTPO(time=時、place=場所、occasion=場合)が守られていました。いくら昔でも男性と女性だから、お互いに知りたいし、特に男性は女性の容姿や裸体に興味があることは今も昔も変わりません。そんな記録は文章でも春本(色本)にも浮世絵にも書かれていることです。でも、男女の夜の密会とか、夫婦の秘め事などの場合はそれなりなのですが、昼間とか、共同の場所などでは、まったくその素振りを見せないのが日本男児だったのです。

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