前のブログで昔の平均寿命を紹介しました。
乳児の死亡率が高かったので昔から近年まで一見、平均寿命は短いですが、
短命の人も残念ながら多くいた一方、長生きした人は、長生きしたということを言いました。
では、死因は何だったのでしょうか?
第19回感染症に苦しめられてきた、日本人の病気
病気の種類は、古くから日本にあって苦しめられてきたもの、ある時代に交易により他の大陸から持ちきたされたものがあり、今日の医学では死に至らない病気になっているものが多く、現在だったら、短命の人で助かった命が多くあったようです。病気は、人骨によって調べます。
どの時代にどんな病気が日本に伝えられたかを年代ごとにみていきます。
これらの病気は、治療法がなく、不治の病であり人類・日本人を後世まで苦しめました。治療法が見つかったのは近年(最近)であることに驚かされます。
まず、縄文時代~弥生時代~奈良・平安時代~安土桃山時代~江戸時代~明治・大正とみていきます
なお、旧石器時代に次いで初めて土器が使われた縄文時代は、紀元前1万3000年前から400年前をさし、本格的な稲作が始まる弥生時代の開始まで、約1万年間続きました。非常に長い期間続きましたが、優れた技術や豊かな精神世界を持ち、成熟した社会であったと考えられます。その後弥生時代(~3世紀半ば)が始まります。(縄文遺跡群世界遺産事務局(三内丸山遺跡センター 世界文化遺産課内より)。
治療法と年代を<>で示します
1)縄文時代
縄文時代の人骨を調べると、病気の痕が結構みつかります。
①がん
癒着の痕(加曽利貝塚)
<未完成>
②ポリオ(小児マヒ)
背中が曲がり癒着した例(北海道の入江貝塚)(栃木県の大谷寺洞穴遺跡)
<1950年代、不活化ワクチン、生ポリオワクチンが開発された>
③ケガや骨折痕
相当ある
④栄養不足
古い時期では、成長の止まった「飢餓線」が相当ある
2)弥生時代
①結核菌
縄文時代人骨に現時点で脊椎カリエスの症例はなく、弥生時代になって稲作とともに日本に持ち込まれたと考えられます。
<1890年、コッホが結核の治療薬としてツベルクリンを発表。ツベルクリンは副作用も強く、また結核菌自体を弱らせるものではなく、治療薬としては失敗。結核に有効な最初の治療法であるストレプトマイシンが発見されたのは1944年で、現在予防接種に使われているBCGワクチンは、1921年にパリで投与されたのが始まりです。日本では1924年に初めて菌株が持ち込まれた>
3)飛鳥時代
①赤斑瘡(はしか)
<1954年にEnders等が麻しんウイルスの分離に成功し、ワクチンの開発が各国で始まった>
4)奈良~平安時代
①天然痘
日本では奈良時代に流行の記録があり、737年に平城京でも流行し、近代まで繰り返し流行した。何度も大流行を重ねて江戸時代には定着し、誰もがかかる病気となった。因みに戦国武将の伊達正宗は幼少期に天然痘にかかり右目は失明してしまいました。 その見た目からのちに独眼竜と呼ばれることになります。
<1796年エドワード・ジェンナー が、人類初の天然痘ワクチンを開発。以後変遷を経て1980年完全に撲滅に成功する。
②脚気
後世に亘って、特に江戸時代、明治時代にかけて大流行
白米が原因と考えられ、麦飯などの対策が取られてきたが完全ではなかった。1884年大日本帝国海軍軍医の高木兼寛が指摘。カジュミシェ・フンクは1912年「ビタミン」「ビタミン欠乏症」という新しい概念を提唱し、以後変遷を経て、1968年藤原元典と武田薬品工業は、アリナミンを製剤化、これにより潜在性脚気が撲滅された。
③マラリア
ハマダラカという蚊によって媒介される感染症である。
<アルテミシニン誘導体多剤併用療法、 1700年代キニーネ、 1940年代クロロキン、1972年アルテミシニン。 現在世界各地でワクチンの開発研究中、有効的なものに至らない段階である>
5)鎌倉、室町、安土桃山時代
①梅毒
戦国時代に梅毒が流行した。ヨーロッパの人々が西洋の文明、西洋医学を伝えるとともに梅毒も入ってきた。
<秦佐八郎によって、有機ヒ素化合物の抗菌薬サルバルサンが1908年に開発された。1928年、アレクサンダー・フレミングによりペニシリンが発見され、梅毒はペニシリンという抗菌薬でほぼ完全に治りますが、日本では1944年に生産に成功し日本全国で使用できるようになった>
6)江戸時代
①コレラ
江戸末期に伝来し猛威を振るった
<コレラ菌は、1884年にドイツの細菌学者ロベルト・コッホによって発見された。1895年北里柴三郎がコレラ血清療法を実施。1915年高野六郎らがコレラワクチン開始。日本では現在絶滅>
7)明治時代
①赤痢
最初の流行は 1890 年代,二度目の流行は 1920 年代に始まり,1960 年代後半まで続く。
<1897年に日本で赤痢が大流行したときに医学者志賀潔により発見された。そのため、学名Shigellaと呼ばれている。現在、赤痢に有効なワクチンは世界各地で開発中である。日本では1965年半ば頃から激減し、以降1,000人前後で推移している>
②ペスト
14世紀から19世紀にかけ欧州、アジア、中東に大流行し多くの死者が出た。日本では、
1899年に、海外から持ち込まれたとみられるペストが初めて流行した。その後、大小の流行を繰り返す。
<1894年アレクサンドル・イェルサンや北里柴三郎によって原因菌が突き止められ、有効な感染防止対策がなされた。現代では抗菌薬が有効で、検疫やネズミの駆除などの防疫に努め今日までは80年以上もの間、日本国内で感染・発症したペスト患者は出ていない>
③スペイン風邪
1918年から 1921年にかけて世界を覆いつくしたインフ ルエンザの大流行である。世界中で当 時の人口の4分の1程度に相当する5億人が感染したとされ,死者数は1,700万人から5,000万人との推計が ある。日本(当時人口5,600万人)で の流行は,第1波1918年8月~ 1919年7月,第2波1919年10月~ 1920年7月,第3波1920年8月~ 1921年7月の3波に及び,全患者数23,804,673人,全死者388,727人(致死率1.63%)としている。
<抗生物質は発見されてなく、また有効なワクチンなどはない状態で、インフルエンザウイルスが始めて分離されるのは、1933年まで待たねばならなかった。医学的な手段がなかったため、対策は、患者の隔離、接触者の行動制限、個人衛生、消毒と集会の延期といったありきたりの方法に頼るしかなかった。人が集まる場所では、マスクを着用し、学校を含む公共施設はしばしば閉鎖され、集会は禁止された。患者隔離と接触者の行動制限は広く適用されました>
以上のように非常に多くの難病が襲ったのに、非常に長生きした人がいた(前報)ということは、驚異的であるとともに、人が持つ免疫力の重要性が示唆されます。
まとめ
病気 | 日本 | 世界 | 治療法 |
がん | 縄文時代 | 縄文時代 | 未 開発中 |
ポリオ | 縄文時代 | 縄文時代 | 1950年代不活化ワクチン、生ポリオワクチンが開発された |
結核 | 弥生時代 | 縄文時代 | 1882年ロベルト・コッホが結核菌を発見し、1890年結核治療薬として「ツベルクリン」を発表。 1921年カルメットとゲランがウシ型結核菌からBCGワクチンを開発 |
はしか | 飛鳥時代 | 縄文時代 | 1954年にEnders等が麻しんウイルスの分離に成功し、ワクチンの開発が各国で始まった。 |
天然痘 | 奈良~ 平安時代 | 縄文時代 | 1796年エドワード・ジェンナー が、人類初の天然痘ワクチンを開発。以後変遷を経て1980年完全に撲滅に成功する。 |
脚気 | 奈良~ 平安時代 | 不明 | 1884年,大日本帝国海軍軍医の高木兼寛が指摘。カジュミシェ・フンクは1912年「ビタミン欠乏症」という新しい概念を提唱し、以後変遷を経て、1968年藤原元典と田薬品工業が開発したアリナミンにより潜在性脚気が撲滅された。 |
マラリア | 奈良~平安時代 | 縄文時代 | アルテミシニン誘導体多剤併用療法、1700年代キニーネ、 1940年代クロロキン、1972年アルテミシニン。 現在世界各地でワクチンの開発研究中、有効的なものに至らない段階である |
梅毒 | 戦国時代 | 不明 | 秦佐八郎によって、有機ヒ素化合物の抗菌薬サルバルサンが1908年に開発された。 1928年、フレミングによりペニシリンが発見され、梅毒はほぼ完全に治りますが、日本では1944年に生産に成功した |
コレラ | 江戸時代 | 江戸時代 | コレラ菌は、1884年にドイツの細菌学者ロベルト・コッホによって発見された。 1895年北里柴三郎がコレラ血清療法を実施。 1915年高野六郎らがコレラワクチン開始。 日本では現在絶滅 |
赤痢 | 明治時代 | 不明 | 1897年に志賀潔により発見された。現在、有効なワクチンは世界各地で開発中である。日本では1965年半ば頃から激減し、以降1000人前後で推移している |
ペスト | 明治時代 | 奈良~平安時代 | 1894年アレクサンドル・イェルサンや北里柴三郎によって原因菌が突き止められ、有効な感染防止対策がなされた。日本国内で感染・発症したペスト患者は出ていない |
スペイン風邪 | 大正時代 | 大正時代 | 患者の隔離、接触者の行動制限、個人衛生、消毒と集会の延期マスクの着用し、公共施設の閉鎖、集会の禁止、患者隔離と接触者の行動制限 |
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